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2023-03

談義。橙と、朱と紅

どっぷり創作なので、閲覧注意。




◇7月31日、フーラルの誕生日でした
 フーラルが生まれた日
 ずっと前に書いた、PC内メモ帳での落書きを漫画にしてみました。
 くじについては、魔力の高さは当たり、安定性ははずれでした。ウィーアそのまま。

◇カシェパースとサントレット
 カシェパースとサントレット
 サントが昼寝厨な話。
 本編に微妙に掠っているのですが、該当箇所が未公開なため、ただのBL漫画になったというオチ。…のままはもどかしいので、追記にて該当箇所を掲載しました。

 カシェパースはエミウルとペアのほうがしっくりきますね…。サントレットはプナハかな?マイカかな?と思っているけど、案外フリーで終わりそう。
 




  コーレニン北部 食堂

置いてけぼりにしたマホガニーが気になり食堂に戻ってきたカシェだが、既にマホガニーの姿は無かった。
当然と言えば当然だった。
「1000代目の精霊混じりと、世代を超えて生きる精霊…」
昼食時にマホガニーが話していた内容を思い返すように呟いた。

――そして、それらと繋がりを持つマホガニー。

元はといえば日記に記された『100万年後』が気になりこの時代に来た。
この時代で、マホガニーという後代と出会った。
共同指令を遂行する中で、頼りない後代だと思った。
しかし何故だろう。惹かれる想いを感じた。
マホガニー自身にというよりは、彼の属する世界に、とでも言おうか。

昼食で使ったテーブルから勘付いたカシェは、杖をテーブルに向けて唱えた。
「コトルローノ」
テーブルにインクで書かれた文字が浮かび上がる。
マホガニーからの書置きだった。彼は彼で、何も言わずに去るのが気掛かりだったらしい。

『カシェパースへ。
 所用で離れることになった。
 必要なら、あの時に話した精霊混じりや精霊に根回しをしておくよ。
 マホガニー』

他世代が来ている事を部外者に知られない為だろうか。
書置きは、古代語で書かれていた。

――マホガニー、お前もか…

現在のコーレニンでは滅多に使われることの無くなった古代語。
何故、カシェが読めるのか。
何故、マホガニーが書けるのか。
それは代々ルーの魂系の魔法族が、ある時点の指令で古代語の取得を言い渡されるからだった。
いずれ必要な時が来るからと。
だが実際、コーレニンやルーベリーにおいて古代語が使われることをルーは望んでいなかった。
図書館でも古代語に関する文献は隅の方に追い遣られている。
コーレニンでは1代目の頃から現ルーベリー語が使われているので、魔法族が残した文献も殆どがルーベリー語。
図書館には地球の書物も収められているが、地球の言語は古代語と何ら関係が無いので、古代語で書かれた書籍の占める割合はかなり低かった。

そんな状況下で、取得においては更に「他の魔法族に知られないように」との指示も入っていた。
まだ疑うことを知らない年頃の彼らは、心細さを覚えながらも「自分にしかできない」という魂系特有のプライドもあってか、懸命に取得に励んだ。
必然的にかつてルーベリーで起こった文明について触れることになるも、その時は文明のその後を知らずにいた。
3代目以降の魔法族は、ルーベリー行きを禁じられていた。「コーレニンを離れた者は1年以内に戻らないと魔力を消される」という掟がいつからの物なのかは不明で、それに関係してかせずか、各魂系の魔法族はコーレニンに籠もりきりの生涯を受け容れて過ごすようになっていた。
ルーの魂系の彼らの中には、何らかのきっかけで事実を知った者もいた。
文明を湖に沈めたのは、他ならぬルーであると。

カシェも、その一人だった。
マホガニーもルーベリーに行った以上、恐らく知っているのだろう。

表面上は他の魂系と同じように育てられながらも、裏では他の魂系と区別され育てられる。
これが、ルーの魂系の持つジレンマだった。

テーブル上の文言を見つめていると、背後に近付く気配に気付いた。
「――どうして此処が分かった、サント」

「カシェのことだから」
「理由になってない」
カシェは体ごと振り返り、サントを睨み付ける。
「お前はいつでもそうだ。
 表では適当な事ばかり言って。なのにどうして許されるんだ」
サントはピンと来ないようで首を傾げる。
「はぐらかしている訳じゃないよ?根拠があれば言っているよ」
「お前の場合は根拠を言葉にしないだけだ。勘に基づく根拠なんて幾らでもあるはずだ」
「それなら何故、いちいち言葉にして外に出さないといけないんだい?」
「聞いてる方は苛々するんだよ」

サントとカシェは、互いに反対の性質を持っていた。
太陽魔法専門、心魔法専門。
外へと広がる力、内へと沈み込む力。
陽と、陰。

1つ共通する点があるとしたら、
太陽も心も、コーレニンにおいては直接見られない事だった。
ただ、前者の存在が『何処にあるのか分からない光』だとするならば、
心の中を探るのは『あるのかどうかも分からない光』を扱う事だった。

何度、途方に暮れそうになっただろう。
こちらは心を縛られながら生きているのに。
何の悩みもなくにこにこしていられ、
それでいて分野の違いはあれど高度な魔法を使いこなせる目の前のこいつが、妬ましくて恨めしくて仕方が無かった。

「サント、俺はお前が嫌いだ」

サントは穏やかに目を伏せ、頷く。

「うん、知ってる」

だけどね、とサントは続ける。
「僕はカシェが羨ましいよ」
思わぬ言葉に呆気にとられかけたカシェは、すぐに口を曲げた。
「慰めなんていらない」
サントは負けずに続ける。
「コーレニンの核となるところに踏み込むのが許されている」
「そんなの誰だって出来得る」
「例え僕らがどれだけ突出した能力を見せようと、
 どれだけ仮にルーの魂系に至らない部分があろうと、
 ルーの、君達に対する信頼は一番な上に、絶対に揺るがない」

カシェは眉を顰め、鼻で笑った。
「何故、そう言い切れるんだ」

乱暴で冷ややかな返しを終えた途端、頬に強い衝撃が走った。
一瞬のことだったが、じんじんとした痛みが尾を引く。
訳の分からないまま見上げると、サントの鋭い眼差しと目が合った。
「…痛いな、何するんだよ」
「奇遇だね、僕もだよ」
瞳が小刻みに震えていた。
「どうして自分のことを信じてくれないの?
 僕はカシェを信じているのに」
「関係無いだろ。なんで俺のことなんか信じられるんだよ」
カシェは疼く頬に手を添え、視線を逸らした。

「…だから、俺はお前が嫌いなんだ」


  *

自分が嫌っているのは、サントだけでは無かった。
他の魔法族、ましてや他の世代の魔法族にまで、その対象はいた。

古代語のみならず、古代魔法を知ろうとした時、誰かの文献から知ったのが、ズィナの持つ魔法合成書だった。
1代目のシューナが持っていた魔法道具との事から、同魂系337代目のマイカ・シューナに道具について尋ねた。そこで教えられたのは、1代目の詳細を知り得ない、シューナの魂系特有の事情だった。
カシェの所属する魂系1代目に当たるのはルーなので、頼るのは出来かねた。そこで他魂系を経由し情報を集め、なんとかかつてのシューナの部屋に辿り着いたのだった。

彼の部屋で目の当たりにしたのは、
物を愛し、概念を愛し、研究に没頭し、誰からも心を縛られない"理想的な環境"で生きた、魔法族の形跡だった。
カシェにも知識欲や向学心はあるが、それらは自分の為と言い聞かせつつも、実際には『"誰か"の為』という否定的な動機だった。
この部屋で暮らした魔法族への羨ましさと、自身への悔しさが、同時に心の中に生まれた。


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Author:きぃか
普通の社会人です。

ご訪問ありがとうございます。普通の日記になりました。創作についてもよく語ります。

「なごみの部屋」本家はリンクにあります。
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何卒よろしくお願いいたします。

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